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2013年6月19日水曜日

【領土問題】ベトナムは「中国包囲網」に参加せずに中国と和解へ

☆ベトナム国防次官:米国と組んで中国と対抗することはない、他国との同盟は自殺行為―中国
(6月13日のレコードチャイナ)

http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=73267

http://archive.is/VN1Qq

「軍事知識がある人間ならば、小国が他国と同盟して別の国に立ち向かうことは自殺行為だと分かるだろう」。これはベトナムのグエン・チー・ビン国防次官の発言だ。

(略)

同氏はベトナムは自主独立、祖国防衛を原則としつつ、他国と友好関係を結び危害を与えることはないと発言した。米国のアジアへの帰還戦略については、アジア太平洋地区に平和をもたらし国際法を守って活動するならば反対する理由はないが、よからぬ影響をもたらすならば断固反対すると発言している。



☆越国家主席が訪中へ 南シナ海問題も討議か
(6月13日の共同通信)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130613/mds13061323040006-n1.htm

http://www.peeep.us/e2322bfd

ベトナム外務省は13日、チュオン・タン・サン国家主席が19~21日に中国を公式訪問すると発表した。習近平国家主席ら中国側指導部と会談し、両国が対立する南シナ海の領有権問題についても討議するとみられる。

サン氏はグエン・フー・チョン共産党書記長に次ぐベトナムのナンバー2。2011年7月の国家主席就任後、初めての公式訪中となる。

             ↓

☆中国とベトナムが南シナ海領有権問題を“現状維持”で解決へ:ベトナム国家主席が国賓として本日訪中
http://www.asyura2.com/12/china3/msg/532.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 6 月 19 日 03:36


 中国は、尖閣諸島のみならず、南シナ海の諸島について、ベトナムやフィリピンなど多くの国と係争状態にある。

 「尖閣諸島国有化」表明を行い中国との対立が激化した昨年9月中旬以降、日本政府は、中国を牽制する狙いもあってか、中国とのあいだで領有権問題を抱えるベトナムやフィリピンとの連携を強めようとしてきた。

 昨年11月のASEAN関連首脳会議でも、ベトナムやフィリピンとの連携で中国の領有権主張を国際問題化(南シナ海の領有権問題を多国間の枠組みで解決)しようとしたが、米国からは袖にされ、ベトナムも沈黙を保ち、けっきょく、中国が主張する当事者間での解決に委ねられることになった。

(「領有権問題の解決は国際化せず関係各国間で解決をはかることとし、航行の自由や不測の事態回避などを目的とした「行動規範」を確立する」という合意に至った経緯を日本のメディアはきちんと報じていない)

 とりわけベトナムとの関係においては、先月(5月)初旬、ODAを利用してベトナムに巡視船を供与する話まで進んだ。(軍組織へのODA供与を禁じていることから、ベトナム政府に国家機構の改編を提案するという異例なやり取りもあったという)

 中国や日本のメディアはこれまで取り上げていないようだが、カリフォルニアで米中首脳会談が開催される直前の6月5日、北京で第4回中国ベトナム国防戦略対話が開催され、南シナ海(南沙諸島・西沙諸島)で争っている領有権問題について、「現状維持」(棚上げ)を解決策とする合意が形成された可能性が高い。

 13日、中国外交部は「ベトナムのチュオン・タン・サン国家主席が習近平国家主席の招待で6月19日から21日まで国賓として中国を訪問する」と発表したが、この招待も、国防戦略対話を通じて、南シナ海(南沙諸島・西沙諸島)での領有権問題が棚上げで解決されるメドが付いたからと推測する。

 6月5日に北京で行われた第4回中国ベトナム国防戦略対話の内容を、NHKBS1で6月7日に放送された「ベトナムVTVニュース」に基づいてまとめる。

 対話に参加した両国の主席代表は、中国が人民解放軍の戚副総参謀長で、ベトナムがグエン・チー・ビン国防次官である。

 戚副総参謀長は、ベトナムとの戦略国防対話の直前6月1日に、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で、「海洋主権などで争われる問題に関して、一時的に解決できない状況のなかでは、とりあえず辛抱強く争いを棚上げし、対話を通じた問題解決の方法を求めないといけない」と発言した人物である。

 対話のなかでベトナムのグエン国防次官が提示したとされる事項は、

● 両国の党と国家の参謀であること。両国関係の大局的で戦略的な高いレベルから出発した友好的な協議と平和的な交渉を通した紛争の妥当な解決を堅持すること。

● 両国の軍は、南シナ海の平和な環境をつくり現状を維持し、敏感な地域への出現を減らし、誤解される行為を避ける必要があること。

● 両国の軍は、武力の使用及び武力の使用による威嚇を行わないこと。特に海で平和に働く漁民に対する人道的な対応を貫くこと。

● 両国海軍司令部間のホットラインを通して協力の強化をはかること。

対話の後、中国とベトナムは、両国の国防相間の直通電話設置の合意文書を取り交わしたという。

 ベトナム側の提案に中国側がどのような反応を見せたか触れられていないが、シャングリラ対話での戚副参謀総長の言動やベトナム国家主席を招待したことを考慮すると、中国側もほぼ同意したと推測できる。

 レコードチャイナの記事によると、6月12日に人民網が「ベトナム国防次官:米国と同盟して中国と対抗することはない、他国との同盟は自殺行為」という記事を掲載したという。(日本語版では未発見)

 発言の主は第4回戦略国防対話の主席を務めたグエン・チー・ビン国防次官である。発言した日付が6日になっているから、中国との戦略国防対話の翌日に語ったことになる。

 グエン氏は、「軍事知識がある人間ならば、小国が他国と同盟して別の国に立ち向かうことは自殺行為だと分かるだろう」と語り、「ベトナムは自主独立、祖国防衛を原則としつつ、他国と友好関係を結び危害を与えることはない」、「米国のアジアへの帰還戦略については、アジア太平洋地区に平和をもたらし国際法を守って活動するならば反対する理由はないが、よからぬ影響をもたらすならば断固反対する」と発言したという。

 日本のことは触れられていないが、今後、ベトナムが対中国との関わりで日本と政治的連携を深めることもないと思われる。


 日本が関わる領有権問題は尖閣諸島のみで、南シナ海領有権問題は、中国と東南アジア諸国とのあいだにある係争と考えられているが、南沙諸島と西沙諸島を中心とする南シナ海海域の島々をめぐる領有権問題に日本が無関係というわけではない。

 それは、日本がサンフランシスコ条約で放棄した領土領域のなかに南シナ海の島々が含まれていることでわかる。


 サ条約第二条 (f) 日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

 サ条約第二条(f)に書かれている新南群島が、現在の南沙諸島(スプラトリー諸島)である。日本が1938年に領有を宣言し、新南群島と名付けた。行政区分上は、閣議決定で植民地であった台湾の高雄市の一部となった。

 このような経緯から、日本の敗戦後、新南群島及び西沙群島に対する領有権は中華民国に移った。
 サ条約には、北方領土もだが、日本が放棄することは規定されていても、どこの国が領有権を引き継ぐかについては規定されていない。
 台湾がUN(連合国)での代表権を維持していたときに締結された日華条約(日中国交正常化で破棄)で、

第二条
 日本国は、千九百五十一年九月八日にアメリカ合衆国のサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約(以下「サン・フランシスコ条約」という。)第二条に基き、台湾及び澎湖諸島並びに新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄したことが承認される。

と明記はされているが、新南群島及び西沙群島が中華民国の領有になったという明確な記述はない。

 連合国での代表権を認められずサンフランシスコ講和会議にも招かれなかった中華人民共和国の周恩来外相は、サンフランシスコ講和条約の草案における南シナ海領域の扱いについて、次のようにクレームを付け、宣言も発している。

「対日講和問題に関する周恩来中国外相の声明」 1951年8月15日

「草案は、故意に日本が西鳥島と西沙群島にたいする一切の権利を放棄すると規定し、その主権返還の問題について言及するところがない。実は、西沙群島と西鳥島とは、南沙群島、中沙群島及び東沙群島と全く同じように、これまでずっと中国領土であったし、日本帝国主義が侵略戦争をおこした際、一時手放されたが、日本が降伏してからは当時の中国政府により全部接収されたのである。中華人民共和国中央人民政府はここにつぎのとおり宣言する。すなわち中華人民共和国の西鳥島と西沙群島にたいする犯すことのできない主権は、対日平和条約アメリカ、イギリス案で規定の有無にかかわらず、またどのように規定されていようが、なんら影響を受けるものではない。 」


※ 周恩来中国外相の声明でいう「西鳥島」が、現在、ベトナムが実効支配している南沙諸島の一つ南威島である。
 中沙諸島は、スカボロー礁(黄岩島)が存在するところで、昨年4月、スカボロー礁周囲で中国の漁船が拿捕され、大きな係争になったところである。

 南シナ海で起きている領有権問題は、日本で、覇権主義に走る中国の剥き出しの利益追求と横暴ぶりが原因であるかのように思われているフシがある。
 しかし、尖閣諸島とは違い、中国(台湾)の南シナ海の島々に対する領有権の主張は、日本が領有し台湾の一部とした歴史的経緯もあり、台湾も中国の一部と考えるのなら、大国になった中国の覇権主義の現れとは一概に言えないのである。

 南シナ海の島々の領有権が多くの国々のあいだの係争状態になっているのは、1938年から1945年のあいだの日本領有を経て、中国の内戦・分裂、ベトナムの独立と南北分裂そして統一というごたごたのアジアの歴史があったからとも言える。

 南沙・西沙諸島をめぐる中国とベトナムの係争も、中国と南ベトナムの係争を引き継いだものと言える。
 中国が西沙諸島を実効支配しているのも、ベトナム戦争末期の1974年に南ベトナムとのあいだの「西沙諸島の戦い」で勝利した結果である。


 今日か明日に行われるはずのベトナムと中国の首脳会談で、南沙諸島及び南シナ海海域の取り扱いがどう決着するのか大きな関心をもって見守りたい。

 ベトナムとの領有権問題が解決すれば、大きく顕在化している紛争相手は、日本を除けば、フィリピンだけと言えるだろう。

 そのフィリピンも、海洋条約に基づき中国を相手にした提訴を行ったが、昨年の騒動で受けた経済的打撃の大きさや台湾漁船銃撃事件もあり、スカボロー礁(黄岩島)への執着を弱めているようである。
 台湾漁船銃撃事件のあと、フィリピン政府は、フィリピン諸島の西側(スカボロー礁(黄岩島)が存在)や北側(台湾との間で排他的経済水域をめぐり係争)での漁を断念し、東側の海域に漁場を育成する決定を行っている。


 何度か書いてきたが、尖閣諸島の領有権問題は、近代法の論理に従う限り、日本に正当性があり、中国の主張には正当性がない。
 最近も話題になった「棚上げ」論も、田中首相と周恩来首相の腹芸というレベルの話でしかなく、両国が正式に取り決めたものではない。

 しかし、だからといって、尖閣諸島をテーマにした協議もしないとむげに対応するのは愚かである。
 中国が日本の施政権(表見的領有権)を認めることを前提に、尖閣諸島問題が今後の日中関係のトゲにならないよう決着をつけるべきだと思っている。

 裏でこそこそ蓋をすれば、そう遠くない先にちょっとしたきっかけで“尖閣問題”の蓋が開くことになるだろう。そんな愚かな繰り返しは、そろそろおしまいにしたほうがいい。
 水面下の交渉(裏取引)や腹芸でモグラ叩き的に始末を付けるのではなく、きっちり明文化して決着をつけるべきである。



※ 尖閣諸島領有権問題関連投稿

「釣魚島問題棚上げの合意を無視していいのか:「それでいいのダ」」
http://www.asyura2.com/13/senkyo148/msg/887.html

「野中氏の「尖閣棚上げ」合意指摘、外相と官房長官が全面否定:当時の外務省橋本中国課長が「尖閣棚上げ」関連の記録削除」
http://www.asyura2.com/13/senkyo148/msg/765.html

「尖閣領有問題で見せる日中の“絶妙”なやり取り:礼を失する発言の一方で、日本の主張をわざわざ補強して報じる中国」
http://www.asyura2.com/13/senkyo148/msg/615.html

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